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2021.11.01

「算数の壁」の越え方その1 低学年:数と量を一致させる

小学校の算数は、数を数え、数を書くことから始まります。特に低学年の算数は、大人にとっては当たり前に思えることが多いので、つい学校任せ、子ども任せになってしまうかもしれませんが、この中には算数の大切なポイントが隠れています。
ぜひ親子で学んでこれから学ぶ算数の土台を築いてください。今回は小学校算数の3つの壁のうちの1つ、「低学年の壁」について知って、親子で楽しく越える方法をご紹介します。

「工作を楽しみながら算数を学ぶ効果」でも紹介していますが、認知科学や学習科学では専門家と言われる人たちがどのように学んでいるのかを研究していて(熟達者研究)、その結果「学ぶということは知識をつないで体系化していくこと」だということが分かっています。ですがその知識の体系は人それぞれ違うため、教える側ができるのは体系化を手伝うことだけです。算数の壁の越える方法というのは、壁を越えることを手伝う方法に他なりません。

低学年の算数学習で大切なこと

小学校に上がる前の子どもは、たとえ頭の中で数と量が一致していなくても数を扱う能力は低くないことが分かっています。つまり大きな数まで唱えられたり機械的には計算ができたりしても、数の概念がわかっているとは限らないのです。
難しいたし算やひき算ができると、なんとなく算数全てがわかっているように見えてしまいますが、実は数と量の一致ができていない可能性は残ります。ではどのようにすれば、子どもが数と量を一致させられるよう、手伝うことができるのでしょう。まずは唱える数と位取りの関係に気づかせる方法を、次に数と量の一致を手伝う方法を見ていきます。

唱える数と表す数(記数)の関係を知る

小学校の算数で最初に学ぶことは、数を数えることです。「1、2、3、4...」と数を唱えて、まずは10までの数が書けることを目指します。
一見簡単なことに見えますが、10の書き方を教える時には知っておいた方がよいことがあります。10というのは、数を表すために使える10個の記号(インド・アラビア数字)を使い果たした末に、初めて2桁で表す最初の数だということです。
ところが10を1つの記号だと思っているお子さんも少なくありません。するとどのようなことが起こるかというと、「じゅういち」と唱えることができても書かせてみると「101」と書いてしまいます。また、そのような理解のままでは数と量は一致もできていないと考えられます。

数を表すために使う記号(数字)は10種類であるということを認識しやすくするには、数字をカードにする方法がお勧めです。0から9までをカードにして、10は1と0の2つの数字を並べたものだと感じられるようにします。
0から一緒に数を唱えながらカードの数字と一致させていきましょう。100まで一緒に数えていくと、100になった時にはカードが3枚必要になることもわかります。これらの体験が位取りの土台になります。2桁や3桁の数を唱えてカードを並べるという遊びも有効です。

0から9までのカードで数を数える

位取りと量の関係を知る

大人は何気なく数を書き表していますが、人が数を数えられるようになってから書き表すまでには数千年かかったと言われています。それほど数を書き表すというのは難しいことなのです。
ここでは手作りのブロックを使って位取りと量の関係を見てみましょう。ブロックの作り方は「手作りブロックで、楽しくくり上がりのたし算をしよう」でご紹介しています。


①9までの数を書き表す
9までの数は手元にあるカードで表すことができます。ブロックと合わせながら数と量を一致させていきましょう。

ブロックを使って数と量を一致させる

②10を書き表す
ブロックが10個になったところで、数を表すために使えるカードがなくなりました。そこで10個を1つのまとまりとして隣の部屋(十の位)に移します。10個のまとまりが1個なので十の位の場所に「1」のカードを置きます。一の位にはブロックがありませんので「0」のカードを置きます。これが10の意味と書き表し方です。

10の意味と書き表し方

このように10のまとまりをつくって位を変える書き表し方を十進位取り記数法といいます。このルールが理解できれば、小数もその延長として簡単に理解することができます。整数と小数をうまく体系化できるのです。


③数字を書く場所で量が違うことを知る
ブロックを使って位取りを学ぶ利点は、同じ数字でも書く場所によって表す量が違うことが体感できることです。例えば「11」という数は数字だけ見ると同じ「1」が2つ並んでいるわけですが、それぞれ表している量が違います。写真のようにブロックと位取りを合わせて学ぶと、それを実感できるでしょう。

10の意味と書き表し方

数と量を一致させるということは、算数を現実の世界と結びつけることにもなります。無味乾燥に見える数字が表している量が見えるからです。さらにくり上がりのたし算やくり下がりのひき算もスムーズに理解できます。子どもが自らくり上がりの計算方法を発見することも珍しくはありません。


このように低学年では単に数字を操るだけでなく、数と量を一致させることが重要です。その視点で見ると「9+3」のようなくり上がりの計算で「10、11、12」と指を折りながら答えを探すことはあまり良くないことがわかります。この方法は数を数えているだけで量を理解しているわけではないからです。低学年の算数学習では「数と量の一致」が重要だと気づいて頂き、少しでもお子さんへのお声かけに役立てて頂けたらと思います。

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#中牟田宴子 , #位取り , #低学年 , #十進法 , #数と量の一致 , #算数の3つの壁
[中牟田 宴子]
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プロフィール : 中牟田 宴子(なかむた やすこ)

家庭教育研究家。

九州大学卒業。大学では認知心理学を専攻。

大学卒業後は大手メーカーでシステムエンジニアとしてプログラムの設計と開発を担当する。その後育児期間を経て現在は、認知心理学を基に数学と科学などのつながりを学べる「算数・数学塾」を企画運営しながら家庭教育を研究。子どもたちが不思議なものに出会って驚いたり感動したりする瞬間に立ち会えるのが幸せ。

2012年より5年間東京大学大学院工学系研究科で工学教育に関わった。

NPO法人センス・オブ・ワンダーの代表を務め、東京大学工学部や研究機関と共に子どものためのサイエンスカフェなどを企画開催。

認知心理学に基づくナカムタメソッドの研究開発を行い、算数とアート、理科などが融合したコンテンツの開発と普及を行っている。



家庭だから伸ばせる子どもの才能

「算数・数学塾」の企画・運営の中で発見したことや、二児の母として子どもを育てる上で実践してきた家庭学習のヒントとその成果などをつづったブログです。

https://sansu-sugau.hatenablog.com/



現在、さいたま市にて開校している「さんすう大好き!」が生まれる教室、 「算数・数学塾」のWEBサイト

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