





贈与税なしで祖父母から教育資金を支援してもらうには?
お盆の帰省やお正月の挨拶などの際、実家のご両親から孫である「わが子」に教育資金の援助をしたいと申し出があった場合、どのような方法で受け取るのが良いでしょうか。できれば、贈与税がかからない方法で受け取りたいですよね。今回は「祖父母による孫への教育費の支援方法」について4つの方法を解説いたします。
贈与税のしくみ
個人から財産を「贈与」してもらった時には、贈与税がかかります。税金を納める義務は「受贈者」(財産をもらう人)に発生します。贈与税の課税方法は「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つです。それぞれの特徴を制度ごとに、教育費を贈与で受け取る際の利用方法と相続発生時の注意点についてご説明いたします。
財産をもらったとき|国税庁暦年課税(暦年贈与)を利用する場合
1年間(1月1日から12月31日)に「贈与」として受け取った「財産」から、基礎控除(110万円)を差し引いて、残った金額に税金がかかります。つまり1年間あたり110万円までは、贈与税の負担なしに受け取ることが可能です。贈与で受け取った財産は、学校の授業料や塾代などの教育費に限らず、衣服代や旅行代などに支出できます。
上限額は110万円ですから、まとまった金額をもらう場合は数年かかります。なお、基礎控除額は受贈者(財産をもらう人)ごとの1年間の上限額です。祖父母からそれぞれ110万円ずつ非課税で受け取れる訳ではないので、注意しましょう。
相続が発生した時の課税について
贈与をしてくれた方が、お亡くなりになった場合、「相続」または「遺贈」によって、亡くなった方の財産を受ける人は、生前に「贈与」で受け取った財産のうち、一定の期間分が、さかのぼって相続財産に「加算」されます。これまで「3年間」が加算の対象でしたが、令和6年1月1日以降の贈与分から、数年かけて「7年間」に延長されています。
そのため贈与を受ける人は、将来、相続発生時に財産を受け取る可能性がある「子」ではなく「孫」にすることが、おすすめです。子が受け取るケースでは、暦年課税の非課税範囲内で贈与を受けていても、想定より早くに祖父母が亡くなると、相続財産に加算され、節税の効果がなくなるからです。
相続時精算課税制度を利用する場合
相続時精算課税制度は、60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子や孫(年齢は贈与する年の1月1日現在)が財産を受け取る場合に、選択できる制度です。贈与開始の年の翌年、贈与税申告期限までに税務署に「届出」をすると利用ができるようになります。
1年間(1月1日から12月31日)に受け取った「財産」から基礎控除額110万円と、特別控除額(累計で2,500万円)を差し引いて、残った金額に一律20%の贈与税がかかります。つまり1年間あたり110万円の他、累計で2,500万円までは、贈与税の負担なしに受け取ることが可能です。そして贈与で受け取った財産の使途は、教育費に限りません。
相続が発生した時の課税について
相続が発生した際は、基礎控除分(年間110万円)を除いた額が、相続財産に加算されることになります。文字通り「相続時に精算し、税金を支払う」制度であり、課税の繰り延べ効果を期待して実施します。ただし、暦年課税と違い、基礎控除分の110万円は、相続財産に加算しません。将来、相続発生時に財産を受け取る可能性がある「子」は、年間110万円までなら、暦年課税よりも相続時精算課税を選択する方が、有利と言えるでしょう。なお、一度相続時精算課税を選択すると、暦年課税には戻れないので、検討をしてから実施してください。
非課税で教育費を一括で贈与してもらう場合
財産を受け取る際には、原則「贈与税」がかかりますが、教育資金は条件を満たせば1,500万円まで、非課税で受け取ることができます。「教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」と呼ばれ、直系尊属(祖父母等)が、30歳未満の方(孫等)への教育資金を贈与する場合に対象となります。
信託銀行等と「教育資金管理契約」を結び、「教育資金非課税申告書」を銀行等に提出した上で、「教育資金贈与専用の口座」を開設する必要があります。口座からお金を引き出す場合は、銀行に領収書を提出し、教育資金であることの確認が取れてからとなります。先に支払いが発生するため、注意しましょう。また受贈者30歳時点で残高がある場合は贈与税の申告が必要になります。 詳細は以前の記事もご参照ください。
お子様の未来を支える 「祖父母からの教育資金贈与」とは?祖父母から教育費の援助を受けるときに知っておきたい3つのポイント
相続が発生した時の課税について
贈与者が死亡した旨を、銀行等に届け出る必要があります。また口座の残額が相続等により取得したものとみなされます。ただし、23歳未満である場合、学校などに在学している場合、教育訓練給付金の支給対象になる教育訓練を受講している場合は、相続税の課税対象となりません。なお、令和5年4月1日以後に、この非課税制度の適用を受けた場合で、その贈与者に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは、23歳未満等の要件を満たしていても、相続税の課税対象となります。
学校へ直接支払ってもらう
祖父母が孫のために、学校や塾の請求書に応じて、振り込む場合は贈与税がかかりません。直系尊属である祖父母は、孫の扶養義務者であるためです。この方法が一番わかりやすく実行しやすいでしょう。教育にかかるお金は年々増加しています。文部科学省の令和6年度「学校基本調査」より、大学や専門学校といった高等教育機関に進学する割合は87.3%、前年度より3.3%上昇し、過去最高となりました。祖父母世代の状況とは、大きく変化しています。折に触れて、孫の進路希望について話をしておくと、スムーズな資金協力が得られるかもしれません。
No.4405 贈与税がかからない場合|国税庁各対策の特徴一覧
それぞれの制度について、特徴を表にまとめてみました。贈与してくださる方の財産の総額や年齢によって、おすすめする制度が違います。例えば、高齢の祖父母からの援助は、年間110万円ずつでは、希望する額まで届かないかもしれません。また財産が多い方は、相続対策のために大きな金額を動かした方がよい場合も。その時は、まとまったお金を渡せる教育資金の一括贈与が候補になります。逆にまだ祖父母が若く、子供も小さい場合は、使途に制限がなく、領収書の提出などの手間がかからない暦年贈与や相続時精算課税を検討してもよいでしょう。
※令和6年1月1日以後の暦年課税に係る贈与から、3年から7年に順次延長
早めの対策が大切
希望する進路を実現させるには、ある程度の資金が必要です。留学や大学院への進学等、想定以上にかかる可能性もあります。貯蓄や節約に励むことはもちろんですが、夫婦で協力しても、限界があります。実家のご両親(祖父母)に資金的な余裕がある場合は、教育費を援助してもらうことも選択肢のひとつです。一括で贈与してもらう、または1年あたり110万円以下で、数年に分けて贈与してもらうなど、方法は様々です。ご両親(祖父母)が元気なうちに早めに相談にのってもらいましょう。もちろん感謝の気持ちも忘れずに。なお、財産が多い場合は、別途相続対策が必要なケースもあるため、税理士等の専門家にご相談ください。
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- プロフィール : 山内 真由美(やまうち まゆみ)
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ファイナンシャルプランナー(CFP®・1級FP技能士) 国家資格キャリアコンサルタント
中学生の双子の母。ファイナンシャルプランナー資格を取得後、都市銀行の支店にて個人向けに資産運用の案内を担当。現在は、東京都内の自治体にてひとり親のための家計相談、高校の保護者会にて奨学金や教育ローンの活用方法について講演している。また資産運用に関するWeb記事の執筆およびムック本の監修を担当。著書は『FPママの親と子で学ぶお金のABC・13歳からのマネーレッスン本』(河出書房新社)
J-FLEC (金融経済教育推進機構)認定アドバイザー
https://www.j-flec.go.jp/advisors/- オフィシャルWebサイト
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