お小遣いはお金とのつきあい方を教える機会
中学生にもなれば普段のお小遣いに加え、お年玉などの大きなお金も保護者が預かるのではなく、子ども自身に管理させたいもの。そのためには、わが子が中高生になったときにはお金とどのように向き合わせたいのか、小学生のうちから考えておきましょう。
中高生のお小遣い事情
中高生は定期的にお小遣いをもらっている割合が6割弱、必要の都度もらっているのが2割強で、もらっていないのは2割弱という調査があります(「子どもの暮らしとお金に関する調査(第3回)2015年度(金融広報中央委員会)」)。お小遣いは子どもが自由に使えるお金という位置づけですから、8割の中高生は自分の裁量で使えるお金を持っていることになります。
お小遣いの1か月平均額は、中学生2,536円、高校生5,114円で、最頻値は中学生1,000円、高校生5,000円となっています。中1は1,000円、中2は2,000円、中3は3,000円、高校生は5,000円をベースに、お小遣いでまかなわせる範囲によって各家庭で幅があるのだろうと思われます。
同調査では、お小遣いの使い道も尋ねているのですが、マンガを買うなどの楽しみの他、文具や部活動費、携帯電話やスマートフォンの使用料、昼食代を払っているケースもあります。
お小遣いは、自由に使ってよいお金というだけでなく、「必要なモノ」も使いみちに含め、やりくりを体験させる構造になっていると思われます。
お金と上手につきあうということ≠貯金
子どもがお金を欲しいと思っても、働いて稼ぐことはできません。中学を卒業するまでは、原則、労働が禁止されているからです。家事や家業を手伝うことによってお駄賃をもらうことはあっても、がんがん稼ぐわけにはいかないのです。子どもの収入は、保護者や祖父母など、まわりにいる大人から家族の一員としてお小遣いをもらうことに加え、正月にお年玉、進学の際の祝い金などです。
子どもはこれらの収入の範囲で欲しいモノを手に入れます。収入よりも欲しいモノの方が金額が高いと手に入れられません。そこで貯金とやりくりの方法を学んでいくことになります。
子どもは、いずれ一人暮らしを始めるときが来るでしょう。欲しいモノを先に買ってしまうと必要なモノを買えないことが起こります。親元にいるうちであれば、お金が足りなくなったとしても、ご飯が食べられなくなるようなことはありませんから、お小遣いの範囲でのお金が足りなくなるという失敗は、命を脅かすようなことではなく、学びのための有意義な経験と言えます。
お小遣いは、子どもが大人になったときに備えて、お金との付き合い方を学ぶ練習道具です。そのような位置づけでお小遣いと向き合えば、たとえば子どもが「お小遣いが足りない、貸して」となったときに、考えられるいくつもの対処法をいろいろ試してみるということが可能になります。計画性、借りたら返すこと、お小遣い額の妥当性など、いろいろ考えることができます。
アルバイト代の管理は本人でも、保護者はサポートを
高校生になれば、自分で稼ぐ子どもも出てきます。アルバイトをする際は、その目的、働く時間、収入として得てよい金額について、親子で必ず話し合うようにします。
保護者に相談なくアルバイトを始めた場合でも頭ごなしにしかりつけるのではなく、自分たちの身を守るために必要な情報として、扶養や社会保険、税金について、社会人の先輩として伝えてください。
アルバイト料の振り込みに金融機関の口座が必要になるはずなので、一緒に窓口で手続きするといいでしょう。今は窓口に行かなくても口座を開くことが可能ですし、コロナ禍以降、金融機関側はインターネット上での手続きを推奨しているように見受けられますが、この際は窓口に親子で行くことをお勧めします。口座開設は金融機関との契約です。契約ということについて、金融機関の人の力を借りて学ぶ良い機会です。だまされないためには、契約の書面をきちんと読むことなどがわかります。
アルバイト先との雇用契約書や、残業代がきちんと支払われているかなどについても大人のサポートが必要です。高校生はしっかりしているように見えて、言いたいことを言えなかったり、理不尽なことに気づかないこともあるからです。
失敗は親元にいるうちに体験を
子どものお金の失敗は、笑って済ませられるものから、学校から注意を受けたり、保護者があちこちに頭を下げることになるようなことまで様々です。
ただ、親元にいる間の失敗は、大人がギャンブルや仕事の失敗で作るような大きな金額になることは、まずありません。
小さな失敗をしたとき、なぜそうなったのか子どもの話を聞いてやり、次はどうすればよいのかを本人が考えられるよう接してあげてください。
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- プロフィール : 菅原 直子(すがわら なおこ)
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ファイナンシャル・プランナー(AFP)、教育資金コンサルタント
会計事務所向けオフコン販売、外資系生命保険会社勤務・同代理店経営を経て、1997年よりファイナンシャル・プランナー。公私立高校や自治体などで保護者・生徒・教員のための進学資金セミナーおよびライフプラン講座・相談会は関東を中心に10年以上にわたって300回超。新聞や雑誌への取材協力や執筆、働けない子どもに関する家計の相談も行う。地元湘南地域密着のFP活動も展開中。3男子の母。
■著書
共著『子どもにかけるお金の本』(主婦の友社)
『子どもの教育費これだけかかります』(日労研)
■所属団体
日本ファイナンシャル・プランナーズ協会
子どもにかけるお金を考える会
働けない子どものお金を考える会