教育資金と家計管理。子育て世代は、目の前の費用だけにとらわれない!
子育て世帯にとっては、教育費の負担はかなり重いと言えます。スマホなどの通信費や、塾代、習い事費用、受験費用など、親の時代よりもさまざまな費用が膨らみやすいからです。
ただ昨今、少子化対策のためにさまざまな施策が打ち出されていることから「今後、教育費はあまり準備しなくてもいいかも。」と思っている方もいるかもしれません。しかしそれで家計管理を怠っていては、今度は親本人の老後準備資金が不足する可能性があります。今回は家計管理と教育資金準備のポイントをお話ししましょう。
家計の収入はどうしてる?
内閣府男女共同参画局の調査(令和3年11月30日)によると、雇用者の共働き世帯は増加傾向で、サラリーマンの夫と専業主婦の世帯は減少傾向です。ただし、共働きといっても、特に妻がパートの共働き世帯数が増加傾向です。
大学生の学生生活費は、自宅通学では年間171.4万円、下宿なら年間222.1万円がかかっているなど、子どもの教育費の負担が重く、少しでも家計の足しにするため、妻がパートに出るという状況になっていることが調査からうかがえます。
ただ、共働きでも、「収入の増加=家計が楽になる」にすぐつながるかどうかは、その後の家計管理がちゃんとできていることが前提です。共働きになることで収入が増えても、外食が増えたり、習い事を増やしたりして支出が増加してしまうと、せっかくの共働きの効果が無くなることにもなりかねません。教育費がかかる時期だからこそ、しっかりと家計管理について見直しておきたいものです。
財布はいくつ?
夫婦どちらにも収入があると、家計管理は甘くなりがちです。その中で、財布が複数になってしまうと、さまざまな管理方法があるでしょうが、子どもがいるご家庭では以下のような管理方法をとるケースが主なものでしょう。
① 家賃や水道光熱費、学費など項目ごとに支払いを分担。
② 夫婦のうち毎月の小遣いなどは自分の口座に入れ、残りはひとつにまとめる。
③ 共同口座に定額を入れつつ、その中から家計費を支出する。
④ 夫婦のうちどちらかが責任を持って管理する。
これらの方法で、二人で管理するのか、それとも一人で管理するのかは、夫婦で得意不得意があることから一概にどちらがよいとは言えませんが、もちろんそれぞれにメリットデメリットはあります。
例えば①のように、自分の担当の支払項目だけ「支払えばいい」という感覚でいると、残った金額を使っているのか貯蓄しているのかわからないままです。一方、④のように一人で管理していると、もう一方の希望が反映されないままというデメリットがあります。
まずは、自分たちは上記のパターンのうちどのような管理方法で、その問題点は何なのか、ご夫婦でメリットデメリットを確認し合ってみましょう。いきなりお金の問題を相談し合うのは難しいかもしれませんが、「子どもの教育資金を準備するための方針を話し合いたい」という言葉をきっかけにするのはいかがでしょうか。
教育費を準備する必要はあるのか?
2024年度から、授業料等減免・給付型奨学金について、多子世帯や理系の学生などへ支援対象が拡大、さらに奨学金の返済が負担となっている方に、貸与型奨学金における減額返還制度の拡充が図られる方針です。
このような報道を見て、今後子どもの支援が増設されるなら、教育費の準備は必要が無くなると感じている方がいるかもしれませんが、もし教育費として使われなくても、お金ならそのまま自分の老後資金にシフトすることもできます。さらに「教育費」として考えると、個別に管理する意識が働き、そこから無駄遣いをすることもなくなります。
令和2年度に創設された国の「高等教育の修学支援新制度」は、もともと「世帯収入や資産の要件を満たしていること」と「進学先で学ぶ意欲がある学生であること」という2つの条件が前提です。もし、返還不要の奨学金の申し込みが認められたとしても、その後、世帯の収入が変化したり、子どもが留年したりと、イレギュラーな事態が発生しないとは言えません。
教育費の準備は家計の中でのリスク管理です。子どもの教育費が終わってから老後資金を考え始めると、準備期間がとても短くなります。物価高に伴う家計管理は、目の前の支出に目が向きがちですが、教育資金は、「決まった時期」に「決まった金額」を将来のために準備するという費用です。
できる範囲で構いません。高校3年の春までに「教育費を貯めるんだ」という強い意識をもって準備したいものです。
- プロフィール : 當舎 緑(とうしゃ みどり)
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社会保険労務士。行政書士。CFP®
一男二女の母。阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。得意テーマは、教育資金の準備方法、社会保険の仕組み、エンディングノートの作り方、これから始めるやさしい終活、成年後見の活用方法、銀行を介さない家族信託の仕組みなど。著書は、『3級FP過去問題集』(金融ブックス)『子どもにかけるお金の本』(主婦の友社)など。
子どもにかけるお金を考える会メンバー
http://childmoney.grupo.jp/
一般社団法人かながわFP生活相談センター理事
http://kanagawafpsoudan.jimdo.com/
- オフィシャルWebサイト
- http://tosha.grupo.jp/