教育資金は最優先?老後資金を踏まえてバランスよく
人生における3大資金として「教育資金」「住宅資金」「老後資金」があります。「3大支出」とも言われており、これらがいくらかかるかを理解し、バランスよく、計画的に準備することで、将来に渡って安心できるライフプランが立てやすくなります。
ここでは、そのうちの2つである「教育資金」と「老後資金」の考え方について知り、バランスよく準備する方法について考えます。
教育資金の考え方
子どもがいる家庭の場合「教育資金」は必ずかかりますが、トータル的にかかる教育費はどのような進路を選択するかによって大きく異なります。
中学受験をして、中高一貫の私立の学校に行くか?高校まで公立の学校を選択するか?
大学は理系か文系か?また、国立か私立か?など、どのコースを選択するかによって、授業料には大きな差があります。また、公立高校に通っていても、大学受験のために高額な塾に通ったり、浪人をして予備校に行ったりした場合、私立高校からエスカレータ式で大学に進学した方が、トータル教育費が安くなるケースもあります。
【子ども1人にかかる教育費の平均額】
参考資料:文部科学省のデータをもとに筆者が作成
図表は「子ども1人にかかる教育費の平均額(私立大学は文系の平均額)」です。幼稚園から大学まで全て公立だった場合は819.0万円、全て私立だと2250.9万円とかなりの差があります。幼稚園から高校までの金額は「お稽古事」や「塾」の費用も含めた平均額ですので、家庭によっても差があります。大学は、実際に学費として納める金額で示していますが、年々上昇傾向にあります。
子どもが2人、3人いる場合は、教育費も2倍、3倍になります(※1)。第1子が中学受験で私立に進学した場合、弟や妹が「お兄ちゃん(お姉ちゃん)と同じ学校に行きたい」と希望し、私立を選択することで家計が厳しくなるケースもよく耳にします。早い段階からご家庭における教育方針、進路選択について考えることが重要です。
※1 所得制限などの条件を満たした場合、高等学校等就学支援金を受けることができます。また、子どもが3人以上の場合、多子世帯、大学授業料等無償化(2025年度より)に該当する可能性もあります。
【参考サイト】
高校生等への修学支援 高等学校等就学支援金制度:文部科学省 (mext.go.jp)
高等教育の修学支援新制度 高等教育の修学支援新制度:文部科学省 (mext.go.jp)
「子どもの意思を尊重したい」「わが子にとって最高の環境で教育を受けさせたい」と思うのは親心ですが、教育費負担が大きすぎて「セカンドライフのためのお金が残っていない」という状況になることは避けたいです。若い世代の場合、働いて収入を増やすことも考えやすいですが、50~60代になると、それまで以上の収入を得るのは簡単ではありません。目先の支出だけでなく、教育費がひと段落した後「理想のセカンドライフを送るためにどれだけのお金が必要か?」も考えておくことが大事です。
老後資金の考え方
では、セカンドライフにかかるお金はいくら準備したら良いのでしょうか?
「老後2000万円」という言葉が数年前話題になりました。「老後は貯蓄を取り崩して暮らしていく人がほとんどなので、取り崩すための不足分の平均額として2000万円を現役の間に貯めておきましょう」という考え方ですが、実際に必要なお金は人それぞれ異なります。平均額ではなく「わが家はいくら必要か?」という視点を持つことが大事です。
ここでは、公的年金の受給が始まる65歳までに準備したい老後資金について考えます。
【65歳までに準備したいお金の考え方】
支出は(A)準備が必要な生活費(65歳以降取り崩すための生活費の不足分)と、(B)(65歳以降かかる)その他の支出や予備費 に分けて考えます。
まずは「普通に生活するために毎月いくら使っているか?」現時点での家計支出を把握します。そのうえで「子どもが自立して夫婦2人になったら、毎月いくら必要か?」生活費を試算します。
例えば、年金などの予想収入が月20万円(ねんきん定期便などで確認してください)で、日々の生活にかかる予想支出が23万円ならば、毎月3万円ずつ不足する計算になります。そして、65歳から100歳までの35年間同じ状況が続くと仮定すると、3万円×12か月×35年となり、取り崩し分(A)として1260万円の準備が必要ということになります。
ポイントは、老後の生活費を予想するために、まず現状の支出を把握することです。「今の家計がどんぶり勘定でどれだけ使っているかわかりません」という場合、老後にかかるお金を予想することはできません。
次に、その他の支出や予備費(B)を算出します。具体的には、海外旅行などの余暇費や、車の買い替え、住宅のリフォーム代や修繕費等、医療・介護費用や、老人ホームに入るためのお金などの大きな支出が該当します。65歳時に住宅ローンが残っている場合は残債額も忘れずに加えます。
これらの支出合計額から、実際に老後資金として準備できている「貯蓄額」、入ってくることが予想される「退職金」や「個人年金」「満期保険金」を差し引いた金額が「65歳までに準備したいお金」となります。これは、現時点で足りなくても、これから働いて貯めればよい目標額です。
物価上昇なども考えられるため、正確な数字を出すのは難しいですが、どれくらいのお金があれば、理想的な老後を送ることが出来そうか?ざっくりでもよいので算出してみて下さい。
資金が足りない場合の対応策
老後にかかるお金がある程度予測できれば、65歳時点でその金額を残したうえで、子どもの教育費に充てられるお金がいくらになるかを逆算して考えることができます。
しかし、現在の貯蓄額が少なく、老後資金どころか、教育資金をねん出するだけでも精一杯という方もいらっしゃるかもしれません。資金が足りない場合は、対応策を考えます。
【教育資金の見直し】
- ・進路選択の見直し(私立ではなく、公立や国立を検討するなど)
- ・お稽古事代や塾代などの支出を見直す
- ・奨学金の活用を検討する(貸与型だけでなく、給付型奨学金も調べることが大事)
【老後資金の考え方】
- ・収入を増やす方法を考える(パートから正社員になるなど働き方の転換、副業、スキルアップ等)
- ・資産運用で増やす(NISAなどを活用して、長期、安定的に増やす等)
長期的な視野をもって資金計画を立てましょう
お子様の将来の可能性を広げるための「教育資金」は必要ですが、保護者のみなさんのセカンドライフを豊かにするための「老後資金」も同様に大切なお金です。
子育て世代はライフイベントが多く、近い未来のお金だけに目が行きがちですが、子どもが巣立った後の生活にかかるお金についても考えてみてください。
そして「今あるお金」「これから入ってくるお金」をベストな配分で活用するためには「どうするのが良いか?」また、それぞれの資金が足りない場合は「今、何をすべきか?何ができるのか?」対応策を考えてみてください。
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- プロフィール : 合田 菜実子(ごうだ なみこ)
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ファイナンシャルプランナー(CFP® 1級FP技能士) 国家資格キャリアコンサルタント スカラシップアドバイザー(日本学生支援機構) マネキャリサポーター® 基礎心理カウンセラー
大学生の母。子育て期間中にファイナンシャルプランナー資格を取得。現在は、お金とキャリア教育の専門家として、子どもたちの豊かな未来のために金融経済教育に力を入れいてる。金融広報中央委員会、日本FP協会主催セミナー他、大学や小中高校におけるお金の授業、高校での教育資金準備講座など講演多数。著書は『教えて合田先生!18歳までに知っておきたいお金の授業』(C&R研究所) 『子育て主婦が知っておきたいお金の話(経法ビジネス出版』『小学生でもわかる、お金にまつわるそもそも事典』(C&R研究所 共著)など。
日本FP協会パーソナルファイナンスインストラクター
https://www.jafp.or.jp/personal_finance/high/inst_disp/
WAFP関東女性FPの会 理事
https://wafp-k.net/
- オフィシャルWebサイト
- https://www.fpcareer.net/