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2022.01.01

「算数の壁」の越え方その3 中学入学前:広がる数の世界に慣れる

算数の3つの壁の最後は、小学校での壁というより中学数学に入る時点での壁です。小学校から高校までの数学を見渡しても、中学数学に入る時の壁は格段に高いと言えるでしょう。その壁の正体は、認知的負荷によるものだと考えられます。
認知的負荷というのは、ヒトが新しい情報を得て脳で処理する際の負担のことです。そもそも中学に入学すると、学習の環境が大きく変わります。教科担任制になったり、単元ごとにテストがあったのが定期的なテストへと変わったりするので、それらの情報を処理して対応していかなくてはいけません。
そのような新しい情報だらけの環境の中で、数学では数の世界が大きく広がります。新しい情報がどんどん加わり、広がった数の世界に慣れて問題が解けるようにならなくてはいけないわけですから、中学1年生での負担が大きいのは容易に想像がつきます。そういった意味でも、まだ学習環境の変化が起こっていない小学生のうちに、広がる数の世界に慣れておくと数学への移行がスムーズになると考えられます。

算数から数学へ

小学校までの算数と中学校以降の数学の大きな違いは、数学ではより抽象的で論理的な内容が重視されることです。そして同時にこれらが算数嫌いを生み出していると言えそうです。中学数学と聞くと、計算の規則や公式をたくさん覚えなくてはいけないと思う人は多いようですが、本来は中学の数学も、きまりを覚えるのではなく、まずは意味を理解することが大切です。

広がる数の世界

小学校算数では0以上の数しか学びませんが、中学数学では0より小さい数の世界も学びます。負の数との出会いです。負の数については様々な理解の仕方があると思いますが、多くの子どもたちに指導してきた結果、数字カードを使った指導が一番理解しやすいと考えています。

正の数と負の数の意味

正の数と負の数が表す量は2種類あります。1つは量の大きさを表すスカラー量、もう1つは量の大きさだけでなく向きを表すベクトル量です。中学1年生のはじめに、この2種類の量について正の数と負の数で表す例が色々と登場しますが、自分の中で分類ができれば混乱することはないでしょう。
例えば3万円の利益を「+3万円」と表し、3万円の損を「-3万円」と表す場合はスカラー量を表していると言えます。学校から東へ2キロメートルを「+2km」と表し、西へ2kmを「-2km」と表す場合は方向も含んでいるのでベクトル量を表していると言えます。この2種類があるということを頭に置きつつ、ご家庭でも問題を出したりして親しんでおくとよいでしょう。

正の数と負の数のたし算とひき算

正の数と負の数の計算ではじめに疑問に思うのは、おそらく「なぜ負の数をひくと正の数のたし算になるのか」でしょう。黒い数字カードと赤い数字カードを使って受け渡しをしながら意味を理解するのがお勧めです。
まずカードの意味ですが、黒いカードは持っていると得点になる得なカードです。一方で赤いカードは持っていると減点される損なカードです。
ここでは小学校でも学んでいる「正の数+正の数」や「正の数-正の数」は省略して説明します。

①負の数+負の数:「(-2)+(-3)」の意味

手元にあるのは赤いカードの2です。そこに赤いカードの3をもらいました。点数は、損なカードを持っていてさらに損なカードをもらったのですから、結果は損することしかありません。つまり「(-2)+(-3)=(-5)」となり、どんどん点数は減って-5点になりました。

②正の数+負の数:「(+2)+(-3)の意味

手元にあるのは黒いカードの2です。そこに赤いカードの3をもらいました。この場合、まずは得なカードと損なカードのどちらが大きいかを見ます。損なカードの方が大きいので、次にどのくらい大きいかを計算すると「3-2=1」となり、損なカードの方が1点多いということになります。「(+2)+(-3)=(-1)」で-1点になりました。

次にひき算を考えてみます。負の数をひくということはどういうことなのでしょうか。

③正の数-負の数:「2-(-3)」の意味

手元にあるのは黒いカードの2です。ここから赤いカードの3を渡したい(取り除きたい)のですが、赤いカードの3はありません。ここで、黒いカードの2と合わせて赤いカードの3と黒いカードの3を持っておくと、赤いカードの3を渡すことができます。(これは、赤いカードの3と黒いカードの3は打ち消し合って0点になるため、最初のカードに加えておいても問題ないという性質を利用しています。)
赤いカードを渡すと、残りは黒いカードの2と黒いカードの3になり5点となりました。損なカードを渡すということは得なカードをもらうのと同じことなのですね。式で考えると「2-(-3)=5」となり5点になりました。

④負の数-負の数:「(-2)-(-3)」の意味

手元にあるのは赤いカードの2です。ここから赤いカードの3を渡したいのですが、赤いカードの3はありません。ここで③と同じように赤いカードの3と黒いカードの3を合わせて持っておくと、赤いカードの3を渡すことができます。赤いカードを渡すと残りは赤いカードの2と黒いカードの3になりました。
②のように、赤と黒のカードで計算する場合は、黒の得なカードの点数と赤の損なカードの点数と、どちらが大きいかを比べる必要がありました。今回は黒のカードの方が「3-2=1」で1点多いことがわかります。結果的に1点の得ということです。式では「(-2)-(-3)=1」となります。

ここまで見てくると、中学の数学の最初は、とてもたくさんの新しいことに出会うのがわかります。認知的負荷を少しでも減らすためにも、広がる数の世界に、早いうちから慣れておくのがよさそうです。

お子さんも中学生になると体も大きくなり、帰宅時間も遅くなって、小学生の頃からすると急に手が離れた気がするかもしれません。ですが、特に中学1年生はこんなに負担の大きい環境にいます。まだまだ手を放さず、さりげなく学習もサポートしながら、少しずつ本人が自分で調整して学習できるように導いてあげてください。

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#中学数学 , #中牟田宴子 , #算数の3つの壁 , #負の数 , #負の数のたし算ひき算
[中牟田 宴子]
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プロフィール : 中牟田 宴子(なかむた やすこ)

家庭教育研究家。

九州大学卒業。大学では認知心理学を専攻。

大学卒業後は大手メーカーでシステムエンジニアとしてプログラムの設計と開発を担当する。その後育児期間を経て現在は、認知心理学を基に数学と科学などのつながりを学べる「算数・数学塾」を企画運営しながら家庭教育を研究。子どもたちが不思議なものに出会って驚いたり感動したりする瞬間に立ち会えるのが幸せ。

2012年より5年間東京大学大学院工学系研究科で工学教育に関わった。

NPO法人センス・オブ・ワンダーの代表を務め、東京大学工学部や研究機関と共に子どものためのサイエンスカフェなどを企画開催。

認知心理学に基づくナカムタメソッドの研究開発を行い、算数とアート、理科などが融合したコンテンツの開発と普及を行っている。



家庭だから伸ばせる子どもの才能

「算数・数学塾」の企画・運営の中で発見したことや、二児の母として子どもを育てる上で実践してきた家庭学習のヒントとその成果などをつづったブログです。

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現在、さいたま市にて開校している「さんすう大好き!」が生まれる教室、 「算数・数学塾」のWEBサイト

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