高校生の教育費はいくらかかる?
公立・私立の差と総額把握のためのチェックポイントを解説
高校の進学費用は公立と私立で大きく異なります。私立に進学することになったら、公立といくら金額が違うのか。また総額でいくらとなるのか、不安に思う方もいらっしゃることでしょう。今回は「高校生にかかる教育費」について、公立と私立の違いと、具体的にかかる金額の把握方法について解説していきます。
高校の学校数および公立と私立の割合をチェック
まずは高校の学校数と公立と私立の割合を確認してみましょう。全国にある高校(全日制・定時制等)は4,774校、そのうち公立は3,438校、私立は1,321校、国立は15校となっています。全国における私立高校の割合は約27.7%であり、3割を切る状況です。
実は地域によってその割合は大きく異なっており、東京は私立高校の方が多く、その割合は5割を超えているのです。東京在住の方は、他の地域よりも子どもが私立に進学する可能性が高いという認識を持ち、教育資金の準備をしておくことがおすすめです。
出典:学校基本調査 令和6年度(速報) 初等中等教育機関、専修学校・各種学校 学校調査・学校通信教育調査 高等学校(全日制・定時制) | ファイル | 統計データを探す
7 高等学校(全日制・定時制)の学校数及び教職員数
高校生の学習費総額について
それでは高校でかかる教育費について、まずは総額を確認してみましょう。文部科学省「子供の学習費調査」より、学習費総額(学校教育費、学校給食費、学校外活動費)は、公立高校は1年間で約51.3万円、私立高校は年間で約105.4万円。3年間合計では公立高校で約150万円、私立高校で約300万円です。私立高校は公立高校のおおよそ2倍、約150万円の差となっています。
学校教育費には入学金、授業料、通学費用、制服代などが計上されており、いずれも私立高校の方が高くなっています。学校外活動費には塾代などの補助学習費が計上されており、やはり私立の方が高く、その差は年額で10万円です。内訳は以下の表で確認してみてください。
出典:子供の学習費調査 | ファイル | 統計データを探す
1学校種別の学習費
高校授業料の注意点について
高校の授業料は「高等学校等就学支援金制度」により、実質無償となっていますが、この制度には年収制限があります。文部科学省の「子供の学習費調査」は全国の平均値であり、支払った家庭と支払わなかった家庭、両者の数字が反映されているため、注意が必要です。データ上は、公立高校は年額5万2,120円、私立高校は年額28万8,443円と計上されていますが、実際の授業料は以下の通りです。
・東京都の公立高校の授業料(全日制) | 年間11万8,800円(月額9,900円) |
・私立高校の平均授業料(全日制) | 年間44万5,174円(月額37,000円程度) |
※上記公立高校の授業料については、北海道、東京都、大阪府、愛知県、福岡県の場合を例として取り上げており、他の都道府県においては異なる可能性があります。
出典:
公立高校の授業料(全日制)
・北海道
・東京都
・大阪府
・愛知県
・福岡県
令和4年度私立高等学校等初年度授業料等の調査結果について
無償化対象の家庭は、先ほどの学習費総額(公立約150万円、私立約300万円)から、3年間で公立高校は約15.5万円、私立高校で約86.5万円の減額が想定されます。ただし、一旦学校に授業料を納め、後から戻る方法(いわゆるキャッシュバック)にしている所が多いため、余裕をもった資金計画を立てましょう。
出典:高等学校等就学支援金制度:文部科学省一方、無償化対象から外れ、授業料負担がある家庭は、学習費総額よりも3年間で公立高校は約20万円、私立高校は約50万円増額となる可能性があります。なお、一部の自治体(東京都等)では、自治体独自の給付金を支給し、年収制限を撤廃しています。お住まいの自治体の制度を確認してみましょう。
私立高校における費用の注意点について
私立高校の入学金および施設費は、入学する年(初年度)に多くかかります。文部科学省「令和4年度私立高等学校等初年度授業料等の調査結果」より、私立高校の入学金の全国平均は164,196円、施設設備費は149,510円、合計で30万円以上となっており、まとまったお金が必要です。
出典:令和4年度私立高等学校等初年度授業料等の調査結果について
そして入学後、公立高校よりも費用がかさむ傾向にある項目は部活動費、修学旅行費です。部活動に力を入れている私立の学校は多く、全国大会出場などの強豪校となれば、遠征費用や合宿費用、外部の指導者に対する謝礼等がかかります。公立の場合でも、道具の購入費等がかかりますので、部活動に精力的に取り組むお子さんの場合は、部活動費を別に試算しておきましょう。
修学旅行費用は行き先が国内か外国かで費用は大きく異なります。文部科学省「高校生の留学交流・国際交流等に関する調査研究等」によりますと、コロナ禍前の令和元年度に、修学旅行で外国を訪れた高校は全国で893校、そのうち私立高校は439校。前述の通り、全国の私立高校の数は1,321校ですから、私立高校の3割以上は、修学旅行で外国に行く計算です。旅行先により金額は変わりますが、20〜30万円はかかると思われます。あらかじめ学校HP等で修学旅行の行き先をチェックしておくとよいでしょう。
表出典:高校生の留学生交流・国際交流等に関する調査研究等:文部科学省高校の学費を個別にシミュレーションしよう
高校3年間にかかる教育費の全国平均は、公立約150万円、私立約300万円です。子供の進路は予想が難しく、受験に絶対大丈夫ということはありません。私立の高校に進学しても慌てずに済むように、教育資金は多めに用意しておきましょう。特に高校授業料無償化の対象にならない場合は、大きな負担となります。事前に我が家の場合はどうなるか、部活動や修学旅行など追加でかかる金額も踏まえて、おおよその金額をおさえておきましょう。
- プロフィール : 山内 真由美(やまうち まゆみ)
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ファイナンシャルプランナー(CFP®・1級FP技能士) 国家資格キャリアコンサルタント
中学生の双子の母。ファイナンシャルプランナー資格を取得後、都市銀行の支店にて個人向けに資産運用の案内を担当。現在は、東京都内の自治体にてひとり親のための家計相談、高校の保護者会にて奨学金や教育ローンの活用方法について講演している。また資産運用に関するWeb記事の執筆およびムック本の監修を担当。著書は『FPママの親と子で学ぶお金のABC・13歳からのマネーレッスン本』(河出書房新社)- オフィシャルWebサイト
- https://fplifecareer.jimdofree.com/